書き換え 大江戸FAIRY TAIL

【草稿:2017.8.28.Mon.】

 p.222~
 「この期に及んで見苦しい……だが手向かいすると言うなら容赦はせん。
  エルザ、懲らしめてやれ!」
 「はっ!」

 (中略)

p.226
 「将軍だろうが、何だろうが、ダチを傷付ける奴は許さねぇ。それが妖精長屋のやり方だ! 文句あったら何時でも来い!」
 「き、貴様……」
 震えながら、めり込んだ壁を出て一度床に倒れてから、将軍はナツに殴られた顔を押さえ、彼を見た。
 言い捨て、背を向けたナツとの距離は――凡そ五十尺(15m弱)。
 普通の者が、一足跳びで移動するような事は、出来ない距離だ――だがしかし、床に這いつくばった将軍の片手には、光が在った。
 「ナツ、危ない!」
 「――魔法!?」
 ルーシィが気付き、お雪が驚く。
 その間に、将軍の片手に現れた光――魔力の塊が、膨れ上がり、岩で出来た棘のような物を幾つも生やした状態と成った。
 「砕けろォォオッ!!」
 棘だか針だかのようなそれが伸び、六尺前の床を砕き――亀裂を作る衝撃波が、ナツに向かって突進していく。
 「――!」
 ルーシィの声に振り向いたナツが、気付いて間一髪で避ける――その間に将軍は立ち上がり、衝撃波は、床に倒れていた侍や忍達を巻き込んで、衾を破ってその先の壁に到達し、突き破って大穴を開けた。
 「なっ――」
 思わずその場の全員が驚き、魔倶野の町人が声を上げる。

 「――!」マカロフが厳しい声で叫んだ。

 「何が友だ! よくも……。
  よくも余に手を上げるなど、逆らうなど、許さん!
  余は将軍なのだぞ!!?」
 片腕を岩化させたまま、男は咆哮するように叫んだ。
 「まだ言うか、屑野郎!」
 「そうよっ。女の子を物扱いするわ、お城壊すわ、サイテー!」
 ナツの言葉に、便乗するようにルーシィが叫んだ-―ナツも此処まで来るのに破壊活動を繰り返してきた訳だが、そんな事は蚊帳の外だ。
 「黙れ黙れ! お前達が、余を将軍と崇めてきたのだろうが! 町人風情が! 誰の御陰で魔倶野の町で暮らしていけると思っておる!」
 「知らねぇって――言ってんだろ!」
 将軍の繰り出す岩撃に、ナツもまた、右手の拳に炎を纏わせて応戦する――「火竜の鉄拳!」
 岩が砕け、炎が撒き散らされていく――礫〈つぶて〉が辺りに飛び散って、炎が畳や着物に火を付ける。

 「知らない? 知らないだと――。知らないクセに逆らうのか!」
 将軍が、怒号を露〈あら〉わに問い掛ける。
 「どうでもいい! お前なんか、魔倶野には要らない!!」
 売り言葉に買い言葉、ナツがそう言い返しながら、次の魔法の構えに入る。
 「き……、さまァァァァアア――――!!」
 「火竜の――」
 キレて叫ぶ将軍の、その隙に一撃入れようとしたナツだったが――近付いた瞬間、それより速い岩塊の一撃が、ナツに向かって放たれていた。
 「ぐわぁっ!」
 「ナツ――!」
 ハッピーが慌てたように飛んでいき、エルザやマカロフが、思わず将軍のその姿に対して身構える。
 右手の岩塊を竜の頭に、左手にも生じさせたそれを尻尾のように似せた姿で、将軍は目の下にドス黒い隈を作って立っていた。
 「あのさ……、もしかして、アレ滅竜魔法? しかも暴走してる……」
 ルーシィがそんな推測を言い、お雪が「みたいですの」と震える。
 「将軍家は、元々高名な魔導士や、武将共の子孫だからな」
 気が付いていたらしいガジルが、何時の間にか二人のそばに来ていて、言った。
 「政略結婚を繰り返して、その血を幾つも取り込んでやがるんだよ、アイツは―。尤も相殺し合ってるのか、期待ほど凄ぇ魔力は無いがな」
 「ガアアアッ!」
 将軍が竜頭をナツに向ける、ハッピーが引っ張るようにして、寸前でそれを避けさせる。
 「ナツ、ナツ! 大丈夫!?」
 「うっ……、嗚呼! ちょいと油断しただけだぜ!」
 目を開けて、ナツがまた将軍に向かって構えながら、そう言いニヤッと笑う。
 「油断……、かなぁ」
 「心配すんな! お前がついてて負ける訳ねぇだろ!」
 一瞬考え込んだハッピーを、ナツはさりげなく背中に守る位置にするように移動する。
 そのやり取りを見ていた将軍が、やや在って、再び執念の層で竜の尾を鞭のように唸らせた。
 「グオオオ――!」
 またバキバキと、畳だ床だが壊れていく。

 「マズイ! 本気で城が崩れるぞ」
 「将軍! いい加減に――」
 マカロフが言い、エルザが武器を手に身構えた。
 「うるさいっ! 魔倶野を歩けるお前らに、一体何が、余の何が分かる!」
 将軍が叫び、竜の頭をエルザに向かって伸ばさせた。
 「――!」
 直感で、エルザは操装魔法をより強固な防御力を持つそれへと変える。
 「おぉおおお――――!!」
 エルザが将軍の一撃を止めた、その隙を狙い、ナツもまた反射的に駆けていた。
 「させっかぁ――!」
 ガジルが突如として割り込んで、ナツの拳を受け止める。
 「――ぐぁっ!」
 だが、まだ本調子でなかったのか、力負けして将軍と共に押され、倒れる。
 「が、ガジル……」
 「――済まねぇ、将軍。もっとキッチリ戦えるよう、鍛えてやりゃあ良かったなぁ」
 ボロボロと、将軍の腕の岩の竜が崩れていく。
 「アンタがホントに強くなったら、一体どんな怪物になるのか……。
  その力をこの国が、ホントに必要とする時が来たらどうなるのか、色々考えて怖かった……。情けねぇな、武術指南役なのに。――鍛える為に、そばに居るのに……」
 嘆息するガジルに、一同が「…………」、と沈黙する。
 それぞれ、言うべき言葉を探し――、最初に口を開いたのは。
 「……将軍様。
  もしかして、魔倶野に出た事が無いんですの?」
 お雪が、自分の想像を意外だ、と言わんばかりの表情で問う。
 「――嗚呼」
 「無いよ……。
  何時も、町の事は城から見降ろしてきただけだった」
 ガジルが答え、将軍が視線を落とした状態のままで、言った。
 「そんな……」
 「だって余は、将軍だからっ!
  将軍家の跡取りに生まれて、将軍として、この国を治めて……」
 お雪の前で、淡々と喋る将軍の目に――、
 不意に、涙が光って落ちた。
 「魔倶野を守る将軍に、魔倶野を自由に歩く権利なんて、在る訳ないじゃないか!!」
 叫び、男は暫く啜り泣いた。
 「……、将軍、ってぇのは、幕府の総大将だからな――。
  何時起こるかも分からねぇ戦に、ずっと気を揉〈も〉んで備えてなくっちゃならねぇ」ガジルが間を置いた後に、言った。
 「太平の世が、もう何百年も続いてる、って言うのに」
 「ずっと城に居たんだ――。先祖が開き、守ってきた幕府を守って」
 友達なんか、作れる筈も無い――。言い掛けてエルザは、ガジルと同様に黙り込んだ。
 早くも泣き疲れたらしい将軍は、魔力切れの疲弊した様相と相まって――、亡者のように、生気の無い状態に見えた。
 それが大奥の女達と、同じ心の状態だと――、お雪は連想せずに居られなかった。
 人でない、人を人扱いしない狂った心の、その闇が女達の心を蝕み、壊しているのだと思っていたが――、違った。
 いや違いはしないが、将軍自身の心もまた、より深く重い歴史という闇によって、蝕まれ壊され切っていたのだ。
 先祖の重み、魔倶野を治める者としての責任……。
 大名の娘であるお雪には、この惨めな青年の立場と経験と運命が、余りに当然のように、分かってしまった――――今まで想像のつかなかった事が、驚くほど不思議なくらい。
 自分の母が愛した魔倶野に、自分よりも不自由で、心を潰された人間が居る――。籠の鳥、花瓶の花……。彼の言葉の一つ一つが、お雪の中で、それまでとは違う意味で突き刺さる。

 マカロフがそっと周囲を探れば、気を失った者達を除き、忍も侍らも殆どが、とっくに逃げた状態だった――忍の方は、忍だから何処かに控えているのかも知れないが。
 エルザも、ガジルも既にその事に気が付いていた――エルザとしては、将軍とガジルを捕らえて然るべき裁きを受けさせねばならない。
 それが自分の役目だと、気を取り直して将軍に近付こうとした時と。
 
 「余は……、魔倶野なんか――」
 両の袖をボロボロにし、畳に座り込んで顔を上げない将軍が、そう言い掛けたのは同時だった。
 「――ッ!」

 それまで信じられないような顔で、お雪や将軍達の言葉を聞いていたナツが、急に険しい顔をして、駆け様に将軍の手を掴んで引っ張り、走り出す。
 「――あ、待って!」
 「ナツ~!」
 ルーシィとお雪が駆け出して、ハッピーが宙を飛んでいく。
 「こらっ、何処へ連れていく!」
 エルザの怒号が聞こえたが、ナツは焦りにも似た表情で、城の中を走っていく――
 実際、自覚は無いが焦っていた。
 ナツにとって、魔倶野は自慢の町だった――その町の事を、事も在ろうに魔倶野で生まれ育った者に、悪く言わせていい筈が無い。
 ルーシィも、お雪もハッピーも、心はナツと同じだった――将軍が今言おうとした言葉を、最後まで言わせてしまっては、いけない。

 「うわっ、何だ!?」
 「将軍様!?」

 廊下を駆け抜け行く一行を、通りすがりの侍や女中達が驚き、足を止めて見やる。
 「貴様ら、止まれぇ!」
 やがて壊れた門に着き、律儀にその前で構える門番達(復活したらしい)を、ナツは「うるせぇええ――っ!」の一言と共に、片方張り倒して突破した。
 驚いたもう一人の門番の前を、すかさずルーシィ達も通る。

 城を出て、通りを暫く行った処で、ようやくナツは走るのをやめ、ゼイゼイと息を切らしている将軍から手を放し、彼が落ち着いて顔を上げてくるのを、待った。
 「此処は……」呆然と呟く青年に、
 「此処が、魔倶野の町ですの」お雪がキッパリ、笑って言った。
 「まだ夜だから、あんまり人居ないけどねー」とルーシィ。
 「此処から妖精長屋に着く頃には、夜が明けてみんな出て来る。
  そうすりゃあどんどん賑やかになる」
 ナツが、彼にしては淡白な調子でそう言って、未だ呆然としている将軍を見て、瞳に強い意志の光を宿し、言った。
 「――行こう。
  魔倶野を治める将軍が、魔倶野の町を知らなくってどうする」


 「全く……。裁きを受けるまではまだ、アイツは将軍なんだぞ」
 魔倶野城内、エルザが額に手を当てて呟く。
 「まぁまぁ、すぐにそうではなくなる」とマカロフ。「それに、今回はナツのお手柄なんじゃ。少しぐらい見逃してやっても良いじゃろう」
 「御隠居……。~~~~間に合わなかったら……」
 「まぁ、追って相応の処罰は下さねばならぬ事になるかも知れん。しかし将軍を変えるとなると……」
 マカロフは、自分が言った事に対した候補として、何名かの人物を想像した。
 どれも、将軍と類戚関係に在る者ばかりだ――家督を継ぐ事によって将軍家も大名家も成り立っている、でなければ、当代のような男が『将軍』職に就ける筈も無い――。生まれながらに運命を縛られ、自由を奪われ続けてきた結果。
 その青年の心は醜く歪んでしまったのだし、それでも固執したものを取り上げる事は、気弱な男を更に奈落の底に突き落とす事にもなりかねないだろう――逆に、解放されてサバサバするのかも知れないが。
 けれど彼が解放されても、別の誰かがまた『将軍』という呪縛に掛かってしまっては、何も意味は無い――。そもそも将軍という職は、魔倶野城という処はそんな呪縛が在るべき\,!--もの-->ではない。

 「よぉーしっ! 此処が妖精長屋だ!」
 「半分壊れてるけどね――」
 ナツとハッピーにそう言われ、青年が建物をしげしげと見る。
 「朝御飯、ちゃっちゃと作って済ませましょ……。
  魔倶野中を回るんだったら、一日中 足を棒にしたって追い付かないんだから」
 「はいですの!」
 ルーシィの言葉にお雪が言い、
 「あ……、グレイの事忘れて来たですの!」
 と思い出したようにオロオロする。

 「後で、迎えに行かなきゃね~」
 「ほらナツ! どーせウチで食べるんだから、水汲みぐらい行ってきてよ!」
 長屋でバタバタする気配が在った後、戸口に立っている将軍の処へ、中から水桶を持ったナツが出て来る。
 「おお、将軍。
  突っ立ってねーでアンタも手伝え」
 言いつつ移動しようとするナツに、「余波……」と青年は視線を逸らす。
 「井戸の水汲みだ、簡単だろ? つるべをこうやって中に落として、上に上げて、水をコッチに……」
 青年を見ずに喋りながら、ナツは慣れた様子で井戸の水を汲み上げて、つるべから持ってきた方の桶へ移す。
 ――青年には背を向けたまま。
 「魔倶野には要らないって言った言葉、取り消す」
 ナツが言うと、青年は「――!」と弾かれたように顔を上げて彼を見た。
 「――ほらっ! さっさとルーシィん処 戻るぞ」

 流石に素直に謝るとか、ストレートに友達になるとか 口に出せる筈もなく、ナツはそそくさと行こうとする。
 青年は呆然と見送りかけ、やや在って、「嗚呼」と追い掛ける――
 早く魔倶野城へと戻らねばならぬ事は分かっていたが、今だけは。
 そのボロボロで半分壊れた、だが修理途中の妖精長屋が、彼と彼らの居る場所だった。

 (エピローグへ続く)

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 図書館で借りてきたノを読んで、個人的な『FAIRY TALE』のイメージと違ったので。
 時代劇ネタだったけど、ホントに劇と言うか、キャラが『お芝居』で演じてるだけの感じがシたので以下省略。
 あと多分、ジブン歴史・日本史もカジッてるから、軽んじられルのは嫌だっていう個人的感情。
 (掘り下げ過ぎた気もシナイではないけど)
 加えて「武術指南役」ってぇのは、ヤクザの用心棒トカとは違う筈だろ、とゆーツッコミ。(想像ですが)

 大江戸FT自体に続きが在るんだったら、↑の部分を改めてやるノかも知れませんが、まぁFTの番外編みたいなモノだったから。


 グレイやジュビアの方がおざなりにナっている辺り、コレが正しイも言えないシね。

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